東京都清瀬市からの川便り

11年目の春を迎えて、今年も元気「調節池のビオトープ」

   今泉安広 ( 柳瀬川「金山調節池ワークショップ」代表世話人)

          

 2008年に、貴協会から「河川功労者(団体)」の表彰を頂いて、早くも4年の歳月が過ぎました。表彰写真「越流堰と新緑のヤナギ林」を励みに、調節池のビオトープを保全する活動を続けて参りましたが、今春もビオトープの1年の始まりとなる「早春の保全作業」を終えることができました。例年に増して、アカガエルの卵塊が多く(約50体)見つかり、健全なビオトープ保全に会員一同喜んでいます。この間の保全活動によって多くの希少植物が復元し、貴表彰で評価していただいた「多様な動植物から構成された湿地性の生態系」は保全されていますが、水性植生の自然発生からは17年目になり、ビオトープの更新期を迎えています。いままでは湿地の活力を基調にして、湧き水の循環や植物群落を管理していく作業で、ビオトープの豊かさを保全することができましたが、今後は植生の更新という未知の課題に取り組むことになりそうです。既に「ビオトープの盛衰」との悪戦苦闘が始まっています。写真「植物群落と9種のヤナギ」

 この度、ワークショップとしての活動開始から10年の節目を記念して、10年誌;「金山調節池ワークショップ、ビオトープ保全10年間の記録」を刊行いたしました。

 この記念誌は、金山調節池のビオトープが形成されてきた経緯を振り返り、ワークショップの保全作業と湿地性生態系の多様性との関係を検証するための基礎的な資料の一端として、作成したものです。まだまだ不十分ですので、金山調節池の構造的な条件、湿地性生態系における動植物の実態に係わる資料等の作成も考えています。都市近郊での河川周辺では、田んぼや氾濫原などの湿地がなくなってきていますが、洪水調節池のビオトープとしての活用や、身近に親しめる湿地の再生に、少しでも寄与できればとの思いで、「金山調節池」からビオトープの現状や課題について発信していく所存です。

 今、金山調節池は新緑の季節を迎えています。3月初めに枯れ草を刈り取った頃、枯れ草の下で芽出しをしていたフトイ・セリ・チゴザサ・カンガレイ・ミズタガラシなど、本当に多くの植物たちが春の日写真「新緑の植生と湧き水の循環」差しを浴びて、日に日に緑を濃くして成長しています。9種類のヤナギも、順次、花が咲いてきます。水の中では、メダカやエビ類が活発に動き始めるでしょう。草の葉に、木々の間に昆虫の姿が目立つ頃になると、多くの人たちが金山調節池のビオトープを散策に訪れます。清瀬市や所沢市の市民ばかりではなく、都区内からも多くの人たちが、自然の姿のビオトープに親しむようになります。

 この素晴らしいビオトープを保全していくワークショップの作業も忙しくなります。5月の陽射しは、アオミドロを繁茂させます。一年中、除草している外来種も勢いを増してきます。これらの除去・除草も大変な作業ですが、都内では極めて希少になった湿地の在来種から成る植生を保全していくためには、手を抜くとのできない作業です。

 私たちの願いは、身近なところに「自然」を再生していくことです。10年以上継続してきたワークショップ、春夏秋冬の季節に合わせた保全活動が、今年も始まりました。 

2012年3月30日

写真「早春の保全作業」写真「木道の観察路と植生の多様性」